砂防堰堤工事

土砂災害から人と町を守る現代の城壁

これまで幾度となく土砂災害に見舞われてきた広島。
近年相次ぐ記録的豪雨により頻発化、大規模化する土砂災害の脅威に対し、
増岡組は砂防堰堤建設技術で人々の暮らしを守ります。

砂防堰堤の必要性

花崗岩が風化し、地滑りしやすい「マサ土」に覆われた広島は、海岸線近くまで山が迫る地形的特徴と相まって、
生活圏で土砂災害が起こりやすい環境に置かれています。
この災害から人と町を守るためには、砂防堰堤整備が欠かせません。

砂防堰堤工事のステップ

不安定な土砂を押さえ、工事の安全性を確保する初期工程から将来的な再発防止のための増設まで、砂防施設の整備を段階的に3つの工程で進めていきます。

  • 1

    応急対策

    土砂災害により発生した不安定な斜面に対し、工事の安全性を確保するステップです。堰堤建設現場では土砂撤去により工事進入路を確保。堆積した不安定な露岩等に対してはワイヤーや鋼鉄製ネットで押さえ、万一に備えセンサーと警報装置も設置します。

    鋼鉄製ネット
    センサーと警報器を設置
  • 2

    砂防堰堤整備

    周辺の樹木を伐採し、本体掘削からコンクリート打設に進みます。堰堤本体は残存型枠工法を採用(他工法も有り)。肉薄のコンクリート製型枠で外壁を構築し、内部からコンクリートを打設するので、高所における外部からの打設と脱型が不要となり工事の安全性が高まります。

    残存型枠
    コンクリート打設状況
  • 3

    渓流保全工等整備

    緊急工事で整備した砂防堰堤を拡張し、災害の再発に備えます。堰堤の嵩上げと同時に、前堤保護工、砂防施設、渓流保全工を整備することにより強靭化を進めていきます。また、土砂・洪水氾濫被害の発生地区においては遊水地を施す場合もあり河川整備が必要です。

ICT活用工事による生産性向上

生活圏で発生する土砂災害においては、地域住民の一日でも早い日常生活への復帰が望まれます。
様々な条件をもつ現場にマッチした効率のよい施工で工期を短縮するため、
増岡組ではICT(Information and Communication Technology)を用いた現場施工を推進しています。

ICT掘削状況
モニター確認

ICTを活用した砂防堰堤工事の概要

緊急工事には正確でスピーディな地形把握が不可欠です。ICT活用工事においてはUAVで現場地形を測量し、発注者の図面と照合して3Dデータを作成、バックホウにセットしたタブレットに移植したデータからGPSで掘削ポイントを割り出します。これにより工程短縮と精度向上の両立が可能になり、特に砂防堰堤を整備する高低差のある急勾配狭所で、その実力を発揮します。

施工中の砂防堰堤の全景
3D図
  • 1

    現状の把握と検討

    レーザースキャナー搭載型UAVで現況地形を測量。計測した点群データに本工事3Dデータを重ね合わせ、構造物の位置や周辺との取り合い、掘削影響範囲を確認します。現実の状況とデジタル情報(3D設計 データ)をAR(拡張現実)で重ね、実際の掘削切り出し位置や構造物位置を現地で確認し、着工前に完成イメージが関係者に共有され、施工順序・施工に向けたアプローチが検討されます。

    AR
    AR
  • 2

    施工計画

    現地測量や多くの打ち合わせで時間を要していた施工検討が、3Dデータの活用により、早い段階で方針を固め工程管理に活かせます。仮設ヤード・クレーンの作業計画・機種選定の検証にも有益で、クレーン機種の変更等についても、同時施工の実現で生産性が向上。工程短縮だけではなくトータルコストも削減できます。

  • 3

    施工と管理

    実際の施工では、砂防堰堤特有の複雑な掘削作業を、従来の丁張設置測量作業なしで、3D掘削データを入力したICT建機で行います。現場では基準局(衛星アンテナ・受信機・無線機一体型)を設置するRTK-GNSS方式を導入し、ICT建機へ送る補正情報で精度を確保。急勾配掘削時の小さな位置精度の誤差が大きな高さ誤差へと繋がる可能性を低減させ、高精度の掘削(構造物の寸法確保)が実現します。

    また、重要構造物の寸法に影響する土工精度においては、TSによる土工の出来形管理を実施。構造物の寸法に影響する必要最小限とした出来形管理位置で計測時間を短縮。急勾配法面の危険な作業を極力省き、省力化と共に安全性も向上させます。

    さらに構造物ワンマン測量機器の使用3Dデータも作成。3次元化により、設計面との対比をどの位置でもリアルタイムで確認できるので、高精度の構造物建造が可能となります。

    基準局
    精度確認
    出来形調査
    3D

ICT活用工事の意義

従来、2次元図面と現地測量との擦り合わせで行っていた3次元感覚の共有と精度がICTで大幅に向上し、着手時の方向性・実施工での効率アップが実現します。特に生活圏で発生した災害の復旧においてはスピードが大切なので、工程短縮につながるICTは今後も非常に重要な技術です。

現在、ICT技術は急速に普及し、使用できる工種の幅も広がっています。これまで空想だったことが現実となり、知恵を出し合えばどんどん応用できる時代。これからも増岡組は、人と町を守るため、新技術やシステムの導入に積極的に取り組んでいきます。