嚴島神社大鳥居
大規模修復工事

嚴島神社の大鳥居は1875年に再建され現在は9代目にあたります。高さ約16.6mの大鳥居は、木造の鳥居では日本最大級です。海に浮かぶ大鳥居は、圧倒的な存在感と神秘的な雰囲気を合わせています。
大鳥居の主柱足元部分が劣化して大がかりな補修が必要となり、約70年振りの大規模修復工事が計画されました。
2019年6月に仮設足場の組立・調査を開始すると、白蟻や腐朽菌による被害が判明しました。外見からは見られませんが、直径40~50㎝、深さ約4mほどの空洞がありました。使用出来ない袖貫、矧ぎ木等の撤去、脆弱部の欠き取りを行い、木部を埋木にて修理し、その後、施工致しました。さらに今回の大規模修復工事では、耐震補強、屋根の檜皮葺の葺き替え、扁額の漆塗り、大鳥居全体を塗装し、3年半の時を経て2022年12月に工事が完了致しました。
工事期間中は仮設足場で見えなかった大鳥居ですが、目の粗いネット(10㎝角)を使用して昼間に近付くと中が透けてみえるよう配慮し、夜には仮設足場がライトアップされていることで“神秘的な工事現場”と話題になりました。参拝客や観光客の方々に配慮しながら最善を尽くした修復工事となりました。

  • 施工前
    2019年(令和元年)5月

  • 施工後
    2022年(令和4年)12月

工事内容

仮設足場の組立・全体調査

仮設足場の組立後、木部や屋根等の調査解体を進めると、主柱に白蟻による蟻害や腐朽菌による腐れが激しいことが判明しました。

  • 仮設足場

  • 満潮時でも渡れるように仮設浅橋を設置

  • ライトアップされた仮設足場

下袖貫の撤去

下袖貫は2本共腐朽していて使用出来ない状態だったため、袖柱と主柱を鉄骨で手挟んで補強後に撤去を行いました。
撤去した下袖貫は、白蟻及び腐朽菌により大きな穴が開いていました。

  • 下袖貫の撤去

  • 白蟻等の被害の箇所の既存モルタル除去

  • 白蟻や腐朽菌で開いた穴

屋根葺き材の撤去

既存の檜皮葺きを解体して下地材を撤去しました。島木の内部を調査すると、真木及び主柱の柄が蟻害にあっていました。

  • 檜皮葺きの解体

  • 檜皮葺き撤去完了

  • 蟻害による島木内部

矧ぎ木の撤去

傷んだ箇所が全体の30%~40%あり、その矧ぎ木を撤去しました。

  • 傷んだ矧ぎ木除去

  • 矧ぎ木除去後、釘痕跡確認

塗装除去

鳥居の塗料は鉛が混入しているため、ブラスト工法にて飛散させないよう除去しました。

  • 除去作業

  • 除去作業

木部の修理

蟻害や腐朽で傷んだ箇所は、楠材の埋木や矧木で修理。特に主柱の穴は丁寧に埋木施工を行いました。

  • 主柱埋木補修

  • 袖貫下部埋木補修

下袖貫の施工

下袖貫周辺の埋木完了後、下袖貫を施工しました。既存の下袖貫は上下2材で長辺方向は1本物でしたが、下袖貫自体がV字型をしており袖柱からの施工が困難であった為、5分割で制作を行いました。

  • 下袖貫取付

  • 下袖貫取付

上袖貫の施工

下袖貫の復旧後、鉄骨補強を上部に移動させ上袖貫の1本を撤去しました。蟻害等の破損箇所を補修し、上袖貫の施工を行いました。

  • 上袖貫の施工状況

  • 鉄骨補強部分

  • 上袖貫下材取付(直線ではない)

構造補強

【 主柱構造補強 】
根継部にスーパーステンレス製の水平バンドを上下に配置しそれぞれを縦バンドで繋いで補強し、柱頭部は炭素繊維を用いて補強しました。
【 島木構造補強 】
主柱からボルトを島木内部に伸ばし鉄骨のフレームを組みそれぞれを固定しました。

  • 根継部のスーパーステンレスバンド

  • 縦・横スーパーステンレスバンドにて補強

  • 島木内の補強ステンレス鋼材と補強木枠

  • 柱と島木を繋ぐ羽子板ボルトの取付

  • 柱頭部の炭素繊維張り

  • 炭素繊維上に樹脂で固める

屋根

檜皮葺にて施工した後、棟を銅板にて施工しました。

  • 檜皮葺きの施工

  • 箱棟を銅板で施工

矧ぎ木

外部廻りの傷んだ矧ぎ木を施工しました。矧ぎ木は、和釘及びラグスリューにて固定しました。

  • 矧ぎ木施工

  • 固定された矧ぎ木

塗装

矧ぎ木を止めている和釘の防錆処理後、凹んでいる箇所を樹脂パテ下地処理をして全体塗装しました。

  • 塗装作業

  • 塗装作業

扁額修理

既存漆塗りを除去後、木部を修理して漆塗りにて施工しました。金物は金箔押しを施しました。

  • 嚴嶋神社(表面)

  • 伊都岐島神社(裏面)の金箔押し作業